溢れんばかりのJポップ、過激なまでのスラッシュメタル、飽くまでも軽やかなEDM、オペラに見まごう華麗な舞台、それを併せてBABYMETAL。なかの二人は未だ二十歳に満たずとも、既に彼女たちはオルトロックの上に、永久に消えない刻印を打ってしまったのだ*2。北米ではRed Hot Chili Peppersをバックバンドに従え、記念すべきアルバムMetal Resistanceは、西洋チャートにおける日本人ミュージシャンの新たな指標になり、2016年のAPMAでは、Judas Priestのフロントマン、メタルの巨星Rob Halfordの認証を勝ち取った。コメディアンのPaul Scheerは「Andrew W.K.のパワーにAriana Grandeの可愛さを加え、Slayerの汗を振りかけた」と、BABYMETALを評したものだ。多くのバンドが一度でも味わってみたいと願うような大きな人気と知名度を、既にBABYMETALは掴んでしまったと言えるのだ。
SU-METALと仲間たちは、ライブを周るなかで、本来ならずっと年を重ねないと得られないような自信と安定性を確立してきたのだが、それでも音楽に対する若々しい情熱を、依然として心の中に抱いている。SU-METALは、Red Hot Chili Peppers や Metallica 等と共にしたツアーを思い起こす。「今年の4月に Red Hot Chili Peppers と合衆国でツアーをしたんだけど、最後のショーのときにコラボしないかと誘われた」。「2016年の12月に一緒にやったときはChad(Smith、ドラマー)だけだったんだけど、こんどの4月は Red Hot Chili Peppers の他のメンバーも参加してくれて、それは忘れられない経験になった。特別だったのは、彼らが私たちの歌(Gimme Chocolate!!)を演ってくれたことだった」。
BABYMTELは、Metal Resistance神話の8番目のエピソード*9に向けて準備中なのだが、SU-METAL自身は、来るべきライブで、まるでYouTubeの「 Reacts To BABYMETAL」のように、新しい観衆を魅了する(ときには混乱させるかも知れないが)ことを待ち望んでいる。「世界のいろいろな所に私たちを待ってくれている人々がいると思うと、まだ行ったことのない国にいる彼らに、早く会いたいと思う」
*1:表題の「寿ぎて」は「ことほぎて」と読んでください。原題の「for a momentous occasion」に対応します。また、「返す」という動詞は、元へ戻ることを表します。この用法では、本能寺の変のあとに秀吉軍が行った「中国大返し」が有名ですね。この場合は、BABYMETAL軍団が広島へ向けて「返す」わけです。なお、「中国大返し」の際の相手方である毛利軍の大将は小早川隆景と兄の吉川元春でしたが、小早川の本拠は現在の広島県三原市です。小早川と吉川(きっかわ)という名字を持つ人には、現在も広島に縁のある有名人がいますね
Metal Hammer 273号のカバーストーリー「When Worlds Collide」も1951年の映画のタイトルを流用したものだ。この映画の日本語タイトルは「地球最後の日」である。これは、原題から離れて映画の内容を日本版タイトルにしたものだ。だが、BABYMETALの記事のタイトルとしてこれを使ってしまったら、記事の意味が全く分からなくなる。そのため、私は翻訳記事のタイトルを「ふたつの世界が衝突するとき」にした*2。
これに反して、Kim KellyがNoiseyに書いた記事には、映画の日本語タイトルがそのままの形で見事に嵌ってしまう。彼女の選んだタイトルは、"How I Learned to Stop Worrying and Love Babymetal" である。
実を言うと、私は最初、記事のタイトルにまったく感心を払わなかった。それが、翻訳を再開しようと改めてタイトルを意識したとき、これは何だか決まり文句のようなタイトルだなと感じたのだ。調べるとすぐ分かった。スタンリー・キューブリックのブラックコメディー "Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb" だったのだ。この映画には、ほとんど直訳に近い、とても長い日本版のタイトルがついている。
Su-metalとしては、彼女が言うには、いちばん録音が難しかったのは「Tales of the Destinies」だった。と言うのも、テンポが通常の4ビートでも8ビートでもなく、半ビートとか1/4ビートみたいだったから。だから、曲の全体を通じて一定のテンポというものがなかった。だから、とてもハードで、クリックが鳴っていても、合ってるのか間違ってるのかがわからない。曲の感覚をつかむのに精一杯で、だからレコーディングは本当にたいへんで、心配で「ライブでは、どうなってしまうのかな?」と考えてしまった。いつかやってみたいけど、簡単ではなさそうだ。
Kim KellyのBABYMETAL(の誰か)への愛情は、一目惚れのようなものだった。そして、それに気づいたとき、アメリカ人の目からすると子供のように見える女の子を愛する自分をペドファイルだと思ったというわけだ。その対象がYuimetalなのかMoametalなのかについては、しかとは分からないのだが。