居眠り磐音江戸双紙

最近、表題の物語にはまっている。作者のストーリーテラー振りには感心させられるばかりだが、やはり忙し過ぎるのであろう、細かい矛盾が時々出現する。それは基本的には編集者の責任に帰するべきだが、歴史認識に関わることで気になることがあったので、記述する。

そうは言っても、ほとんどの人には何の気にもならない細かい話である。

竹村武左衛門という浪人が登場する。物語を和ませる重要な存在なのだが、彼の出自が最近の巻で明らかになった。津藩の出身であることは前から言われていたが、先祖が伊賀国の無足人の出であることを彼の妻が明らかにしたのである。

作者は竹村武左衛門が武士の中でも下位の貧しい身分であることを表現したいために、伊賀の無足人の出身としたことが、物語の流れから想像される。しかし、伊賀の無足人とは果たしてそうなのだろうか。

そもそも「無足」とは扶持を支給されないと言う意味である。武士の身分は保証されてはいるが、あてがい扶持はない。それだけを捉えると、竹村武左衛門の先祖のように困窮にあえいで故郷を棄て、江戸に出ることも容易に想像される。

しかし、無足人の成り立ちを考えると、無足人の別の側面が見えてくる。