BABYMETALで大騒ぎ

今度の日曜日は、妻と大阪城周辺をのんびりと散歩しながら、最後の紅葉と外国人観光客の群れを眺めていたのだが、そのころRedditでは大騒ぎだったようだ。

BABYMETALの発表については、日本のメディアも公式発表を流していたが、Metal HammerとKerrangにも、あらかじめ発表の内容と関係者のコメントが知らされていたようだ。そのため、Metal Hammerはこの発表を独占記事としており、BBC、Loudwire、Ultimate GuitarなどのサイトはMetal Hammerの記事を踏襲している。しかし、私は敢えてKerrangの記事を紹介したい。その理由が分かりますか?

BABYMETAL新スタジオアルバムを発表

日本のメタルミーツJポップのスーパースター、BABYMETALがセカンドスタジオアルバムの詳細を発表した。狐神が話したその内容は...

BABYMETALは、4月1日にセカンドスタジオアルバムを、earMUSICを通じてリリースする。その日は、4月2日のロンドンSSE Wembley Arenaで行われる大ヘッドラインショーの直前にあたる。後に「狐の日」として知られることになるであろうこの日を、あなたのカレンダーにブックマークせよ。加えて、母国日本における55000人収容の東京ドームで、彼女たちにとって過去最大のショーとなる巨大ヘッドラインギグの開催が予定されている。

バンドの黒幕Kobametalは、次の声明を発表した: 「狐神のお告げによれば、新アルバムが2016年4月1日にリリースされる。この日は「狐の日」として知られることになるだろう。2014年のBABYMETALのデビューアルバムのリリースより、我々は、世界ツアーの名目に、地球全体をノンストップで駆けまわってきた。私は、今年のツアーに世界中から来てくれた人々を見ながら、BABYMETALを通して全ての人がひとつになれるのだという、奇跡的な瞬間を感じることができた。我々の新曲"THE ONE"には、世界をひとつにすることを唄っている歌詞があり、コンサートの聴衆が大好きな"Road of Resistance"には、ファン同士を一体化する力がある。BABYMETALの曲は、全てがこの壮大な物語の一部なのだ。 私は、BABYMETALの曲は、彼女たちが新しい可能性を見いだすための後押しとしてあり続けるのだと、常に信じている。いま私に言えるのは、「狐の日」まで気を長くして、待っていてほしいということだけだ」。

バンドのメインボーカリストであるSu-metalは、次のようにコメントした。「多くの皆さんが今度のアルバムを待ってくれていると信じています。だから、私の全身全霊をアルバム製作に捧げるつもりです。新アルバムのリリース直後にあたる来年のWembley Arenaで、海外のファンの人たちと会えるのを楽しみにしています。そこでは、初めてのライブとなるホヤホヤの新曲を聴いていただけるでしょう。来年の東京ドームで演ることは、まだ夢のように感じられますが、そのステージに立つ自信を持てるように一生懸命頑張ります。来たるべき世界ツアーを通して、成長を続けたいと思います」。

見えてくる決意

なぜ私が、Metal HammerではなくKerrangの記事を紹介したか、分かったでしょうか。

答えは最初の文にある。そう、「スーパースター」。おそらく、これが、著名なメディアでBABYMETALに「superstar」*1の形容をした、最初の記事ではないか。今までなら、「superstar」ではなく「sensation」となっていただろう*2

近い将来ロッククイーンとして世界に君臨するであろう、BABYMETALのリードシンガーのコメントが、今までと違っている。自分が主体となって新アルバムを作るのだという決意が見える。新アルバムには、噂されていた彼女の曲が入るのではないだろうか。プロデューサーのコメントも、それを示唆しているように思えなくもない。前記事でしょうもない心配をしたが、彼女は我々の心配の遥か前を進んでいる*3

東京ドーム公演については、全く驚くに値しない。今年の株式会社アミューズ株主総会では、既に「ドーム球場ツアーを何故やらないのか」という株主質問があったぐらいである。公演が行われるのは、プロ野球シーズンが終了した11月後半から12月になるだろう。来年の株主総会ではまた、株主に「遅すぎる」とか「何故、東京だけなんだ」とか叱られるのかも知れない。

おかしいのは、彼女がWembley Arenaより東京ドームの方を上位においているらしいこと。確かに収容人数は5倍近いが、日本人アーティストにとっての難易度からすれば、Wembleyの方が何十倍も難しい。若いうちから大きなロックフェスティバルの常連としてやっているから、どこか一般人とは感覚がずれている。

Metal Hammer

ここでは記事を紹介しなかったMetal Hammerだが、前記事で紹介した雑誌記事の中で、彼女の変化(主体性の確立)を予期していた節がある。当初、278号の雑誌記事では表題が「The Fox Priestess」だったのに、TeamRockサイトに転載する際に「to The Survivor」が後に付加されていたのだ*4。これには意味がある。

この場合の「Survivor」は「生き残った人」というより、「どんな困難にも生き残れる強い人」と解釈するべきだろう。これは、記事の内容からも明らかである。「自立」、「決意」、「成長」、「困難を乗り越える」、「自信」などを感じさせる部分が至る所に見い出せる。このことは、Metal Hammerが、「baby」でも「novelty act」*5でもない大人のスターバンドとして、BABYMETALを扱っていく宣言だと受け取ることができる*6

さらに、穿った見方をすれば、Metal Hammerは既に、今度のアルバムが彼女を中心に製作されることを、おそらくプロデューサーあたりから聞いていたという見方ができる。それを想像させるのが、Metal Hammerの編集長、Alexander Milas*7が先週末あたりから日本に来ているという事実だ*8。彼はTeamRockサイトの編集長でもあるので、大きな決定権を持っている。彼の来日の目的のひとつは「ヘドバン」誌との関連であるのだが、わざわざこの時期を選んだのが、BABYMETALの横浜公演を観るためであるのは明らかだ*9

当然、BABYMETALと会って話をしただろうし、一連の記事は279号以降に掲載されるだろう。ここで、彼らの来年以降の方針(BABYMETALの売り方)が浮かび上がることになる。Metal Hammerが、若きスーパースターを生みだしたいと望んでいるのは間違いない。もちろん、その候補はBABYMETALだけではない。とは言え、彼らがそれほど多くの候補を抱えているというわけでもない。

来年はMetal Hammerを定期購読してもいいかな?

*1:原文は、superstarsと複数になっている。3人がそれぞれスーパースターというわけですね

*2:日本のメディアなら「メタルアイドルユニット」とか「メタルダンスユニット」となるだろう。人によって見方がこれほど違うのも、たいへん珍しい

*3:とは言え、頑張りすぎないか、心配は心配

*4:前記事では「狐神の巫女から強かな女へ」という表題にした

*5:すぐに消えてゆくような存在。私は一発屋と訳している

*6:既に他のサイトでも、「girls」ではなく「young ladies」や「young women」という表現が増えている

*7:BABYMETALと又吉直樹」の記事中の写真で雑誌を持っている男。去年のBABYMETALの特集番組でもインタビューされていた

*8:彼のInstagramから確認できる

*9:彼は新幹線の写真を嬉しそうにInstagramへ投稿している。これは東京から新横浜へ乗った時のものだろう