Metal Hammer Issue 273 (BABYMETAL特集号)

例のMetal Hammer273号のWeb販売分が完売したのを受けて、Metal Hammer編集部がReddit完売御礼の投稿を行った。

「Hello Babymetal fans – we are Metal Hammer magazine!」という表題がついたRedditへの投稿の冒頭部分を下に示す。

We just want to say a MASSIVE thank you to all of you who bought our entire online stock of Babymetal issues before it was even released. You guys rule!

(まだBABYMETAL特集号の販売開始前であるにも関わらず、オンライン割当分を全てお買い上げくださいました皆様方に、最大の感謝を捧げたいと存じます。あんたらはすごい)

ここで彼らは「Babymetal issues」という言葉を使っている。つまり、273号はBABYMETAL特集号という位置づけのようなのだ。

そもそも、Metal Hammerは月刊誌であるが1年に13冊発行される。この13冊目が何なのかよく分からなかったが、それがどうも「summer issue」すなわち夏の増刊号らしい。5月から7月にかけてロックフェスティバルが多いということもあるのだろう。

その夏の増刊号をBABYMETAL特集にあてたということだ。

前と前々の記事で述べたように、Metal HammerはBABYMETALを奇妙なほど持ち上げていたのだが、この特集号を纏めるのがひとつの目的であったようだ。

BABYMETALに3日間密着

その273号の主題となる記事が、Metal Hammerのサイトに掲示された。現在、雑誌の発売前だが、無料の会員登録をすると読むことができる*1

表題は「BABYMETAL:世界が衝突するとき」

著者はEleanor Goodman*2

冒頭文は

彼女たちを愛するにせよ嫌うにせよ、ひとつだけ確かなことがある。BABYMETALはこの何年かの間、世界で最も話題になったバンドだということだ。Metal Hammerは混沌に満ちた72時間を密着取材した。

ここでの3日間(=72時間)というのは、Download当日の金曜日(2015年6月12日)、DragonForceとリハーサルを行った日曜日(6月14日)、そしてGolden Gods Awards当日の月曜日(6月15日)である。

ちょっと長い読み応えのある記事である。出来事を時間経過と共に追いながら、間に考察*3をはさんでいく形式になっている。最後に狐神についての真面目な解説がついているのがおかしい*4

版権もあるだろうから、瑣末なエピソードの抜粋と部分訳を紹介する。

エピソード

  1. 金曜日のDownloadへの飛び入りは全くリハーサル無し*5だったが、DragonForceはあらかじめ、BABYMETALのツアービデオを十分に研究していた
  2. Herman Liは、Downloadの前日、時差ボケと責任感で眠れなかった*6
  3. DragonForceのベーシストFred Leclercqは、BABYMETALがステージを去る時、ハートマークを作って送った*7
  4. 日曜日のDragonForceとのリハーサルにおける3人の格好は、上はツアー用のTシャツ、下はパジャマ*8。まわりの皆という皆が、とてもかわいいと言っていた
  5. Herman LiはRORを書いた時、まさか自分がライブで演奏するとは思ってもいなかったので、思いっきり難しく、複雑でクレイジーに作った、と告白した
  6. リハーサルでは、最後の挨拶(3人を真ん中に手をつないでお辞儀したやつ)の練習もした
  7. メタルファンとしての小林啓は、自身のアイドルであったDragonForceと打ち合わせしている自分を夢のように感じている
  8. 3人は小林啓のことをお父さんと呼んでいる。ツアーにはお母さん役*9も同道する
  9. ツアーでの午前中の日課は家庭教師がついた勉強
  10. ゆいはスケートボード付きのスーツケースを持っている*10
  11. 間の土曜日、オーストラリアのポップ・グループのコンサートを観るためにWembley Arenaへ行った

このうち最後のエピソードは、ちょっと注目しておく必要がある。通訳兼ツアーマネージャのノラの証言では、彼ら*11は「いつかWembley Arenaで演ってみたい」という感じで施設を見て回ったらしい。Wembley Arenaは収容数12500人*12。おそらく来年にも、ここでやることを考えているのだろう。

Downloadにて(冒頭文に続く部分)

前々の記事での推測と関連する部分を訳出する。

金曜日の午後、Downloadフェスティバルのアーティストエリアの中にある楽屋に、我々がこそこそと忍び入ったとき、彼女たちはそこにいた。リードシンガーのSu-metalとその両側にYuimetalとMoametal、彼女たちのトレードマークである赤と黒の衣装に身をつつんで。とろけるように「カワイイ」メタルのマーマイトな*13バンド。この2年間、彼女たちは我々の世界に起きた最大の出来事であり、いまだに彼女たちをどう捉えるのかという意見は、完全にまっぷたつに分裂している。そんな議論が、私たちをずっと待ってくれていた、このニコニコした3人の少女に降りかかっていたのである。握手の後で、いまの様子を聞く。
「とても元気です」、彼女たちは顔を輝かせながら、ユニゾンで大きな声で答える。そして、言葉を探すためにしばらく間を置いた後、「The Goldern Godsを楽しみにしています!」。
BABYMETALは、公式には、今日はDownloadに出演しないことになっているが、DragonForceの枠の途中にサプライズで登場する。彼らは、少女たちのいつものバックバンドである神バンドの代わりを果たすことになっている。月曜日に行われるMetal Hammerの賞のセレモニーのために、いわば公開リハーサルを行うのだ。

前々の記事で、Downloadでのサプライズ出演は、Metal Hammerの記者が筋書きを書いたと推測していたのだが、それはほぼ当たっていたようだ。記者が普段入れないアーティストエリアに入っていけたこと、サプライズ出演がリハーサル代わりであるという内容を完全に把握していたこと等、彼らは「犯人」でないと不可能な(成し得ない/知り得ない)事実を白状している。

*1:月に3記事まで

*2:前記事中の写真で真ん中にいる女性ではないか

*3:小林啓の思いやヘドバン誌の編集長梅沢直幸の分析など

*4:シェフィールド大学の日本文化研究の講師までひっぱりだしている。狐神好きもここまで来るとなかなか

*5:別ソースでHerman Liが言っていた。ちょっと信じ難い

*6:Downloadのインタビューで、調子はバッチリだとか、BABYMETALが何をするのか全く知らないなどと白々しく答えていた

*7:彼女たちがかわいくて仕方ないらしい

*8:情報を総合するとスウェットパンツのようなものだろう

*9:振付け助手のことらしい

*10:たぶんこれ

*11:彼らという場合は、3人以外のスタッフも含む

*12:サッカーで有名なWembley Studiumとは隣同士で、こちらは90000人収容。Studiumでもコンサートは開かれる。もしBABYMETALがStudiumでコンサートを開くようになったら、正真正銘のスーパースターと言えるだろう

*13:Marmite。好き嫌いが極端に別れるという意味の形容詞。ビール酵母から作られる同名の食品が、匂いが強く好き嫌いが別れるために、転じて形容詞になった。元々の語源は、フランスの鍋から来たので「マルミット」と書いていたが、英語の形容詞があることが分かったので修正