山本彩と Susan Tedeschi を並べてみようと思ったのは、去年のツアーで山本が丈の長い妙なワンピースを着ていたことに遡る。古代ギリシャ人のような白いドレスなんだが、山本は背が小さいから長いスカートは似合わない。そもそも、パンクバンドの女性リードギタリストの革のミニスカートならともかく、こういう格好にエレキギターはとても奇妙な取り合わせだ。
それと同じ違和感を感じたのが、今年の Greenwich Town Party*1における Susan Tedesch iだったのだ。
Susan Tedeschi と Derek Trucks が結婚したのは2001年の12月。長男が生まれたのは翌年の3月だから、所謂デキ婚なのだろう。その時 Tedeschi は31歳の女ざかりだったのに対し、夫の Trucks はなんと22歳。誰が見ても、年上のお姉さんが若い男を誘惑した図式になる。
ただ、Tedeschi が誘惑したかどうかはともかく、ふたりのプロミュージシャンとしてのキャリアはあまり変わらない。Trucks は、10代前半から既に The Allman Brothers Band のサポートギタリストをしていた天才少年だったのだ。そして2001年の時点では、自分のリーダーバンドも持ち、Dickey Betts を襲って The Allman Brothers Band のリードギタリストにおさまっていたから、前年にグラミー賞新人賞にもノミネートされていた Susan Tedeschi になんら引けをとらないどころか、ミュージシャンとしてのステータスは彼のほうがより上だったとさえ言えるのだ。
さて結婚した二人だが、2004年には長女も生まれて家庭生活は順調。しかし問題もある。お互いがキャリアを積めば積むほど人気が上がり、それぞれのバンドが忙しくなる。まして Trucks には The Allman Brothers Band があるから*3、一緒に過ごす時間が少なくなる。そこで、Tedeschi が Trucks のバンドに客演したり、ふたつのバンドでツアーを一緒にやったり、Tedeschi のアルバムを Trucks がプロデュースしたりしていたのだが、その根底には、夫婦としての愛情だけでない、お互いの音楽性に対するリスペクトがあったのは間違いない。
*2:上の写真は二人ともレスポールを持っている。Tedeschi はストラトキャスターも使うが、レスポールを使うことが一番多いようだ。去年の山本のツアーの写真は例の白いグレッチを持っているものばかりなので、レスポールを持っている画像を動画からクリップした。ちなみにレスポールというのは、正確には Les Paul Model といい、実在のギタリスト Les Paul のシグネチャーモデルである。Les Paul は発明家でもあり、このギターも単なるシグネチャーモデルではなく Les Paul とギブソン社の共同開発である。Les Paul はミュージシャンとしては長命で2009年に94歳で無くなった。面白いことに、Susan Tedeschi と Derek Trucks は、2002年にカーネギーホールで行われた Les Paul の記念コンサートで、Les Paul 本人と共演したことがある。このときは、生まれたばかりの二人の長男も舞台に上がったそうだ
*3:TTB の結成から4年後の2014年、Derek Trucks は The Allmann Brothers Band も脱退する。オリジナルメンバーの Gregg Allman や Derek のオジである Butch Trucks にすれば、Derek がバンドを引き継いでくれることを期待したのだろうが、彼は妻と作る音楽を選んだ。彼の脱退により、45年続いた伝説のバンドは実質的に終了した