Sonisphere 2014 の動画を観た

BABYMETALに嵌ってしまったため、およそ40年ぶりにロックを聞いている。

そもそもヘビーメタルを蔑んでいた。特にリズムが嫌だ。化粧や大層な舞台装置も合わない。ストーリー性を入れ込む必要が理解できない。要するにBABYMETALが言われている所のギミック(gimmick)こそ、ヘビーメタルを表す表現だと思っていたわけだ。

「BABYMETALはメタルか否か」という議論は、私にはとっては全くどうでもよいのだが、どうもすず香さんがヘビーメタルを意識しているような様子が見える。確かにヘビーメタル界隈の有名人(私は全く知らないが)とあれだけ写真を撮っていたら、思春期の少女なら影響も受けるだろう。そこで前回ヘビーメタルとは何だとWikiを見てみたのだが、意外な事実が出てきて少し認識が変わりつつある。

それでも実際に聞かなければ分からないと思っていた所に、良いものが見つかった。BABYMETALが出演したSonisphereのハイライト動画だ(おそらく放送用の)。

Sonisphere Festival Knebworth 2014 Highlights - Part 1
Sonisphere Festival Knebworth 2014 Highlights - Part 2
Sonisphere Festival Knebworth 2014 Highlights - Part 3

3編に分かれていて、それぞれ1時間強の長さだが音質的にも我慢できる。Iron Maden、Metallica、Slayer、Anthraxなど(どうもこいつらがヘビーメタル業界のトップらしい)が出ているから、流して聞いてみたら大体分かるだろうと思ったわけだ。

メタルの祭典というからたいくつだと思っていたのだが。

全く予想と違っていた。

たまたま最初にPart3を観た。Alice in Chainsというのが出てきた。あれ、普通のアメリカのロックじゃないか。しかも、ボーカルとリードギターがなかなか良い。私の好きだったタイプだ。オールマンブラザーズバンドの流れを感じる。Wikiで調べたら3000万枚以上売った有名なバンドらしい。Sonisphereはヘビーメタルの祭典ではないのか?

ちょっと想定外だったので、今度はPart2に切り替えた。冒頭にBABYMETALのイジメ、ダメ、ゼッタイが登場する。ステージ最後の曲とあってすず香さんがかなり憑依しているが、それはともかく。HIMというのが次に出てきた。Wikiには、「ゴシックサウンドを擁したラブメタルを自称する」と書いてあった。全く意味が分からないが、私にはベースが前に出た普通のイギリス風のロックに聞こえる。ボーカルは、先祖にアジア系の血が入っているように見えるフィンランド人の人を食った奴だが、悪くない。

次のBand of Skullsというのは、もっと良かった。Wikiを見たら、オルタナティヴ・ブルースロックバンドだと書いてあった。オルタナティヴというのが意味不明だが、ロックの一派であるらしい。中身はオルタナティブ(本来はもうひとつのとか、別のとかいう意味)どころか、正真正銘のブルースロックだ。女がベースを弾いているが大女なので似あっている。リードギターはそのボーカルも含めて素晴らしい。若いころならアルバムを買っただろう。

次がFrank Turnerと言う男。昔ならフォークロックと言っていたような曲で、かなりPOPだ。歌がうまい。普通に聞いていられる。その次は、Dropkick Murphys。もちろん知らなかったが、メロディーが耳に残るアメリカンなPOPロックだった。結構たのしい。昭和の時代なら日本で流行ったろう。さらに、Gary Numan。若く見えるが、私とほとんど変わらないのか。昔、聞いたことあるかも。これも普通のイギリス風のロック。

ここまで完全に予想外だった。私の考えていたヘビーメタルと思えるのが全く出てこない。強いて言えば、BABYMETALが一番ヘビーメタル風に聞こえる。Sonisphereはヘビーメタルと言っていたよな。

そこで現れたのがDeftones。最悪なリズムを刻むドラム、単純な低音のフレーズを繰り返すギター(リードギターとも呼べない。これがどこかに書いていたダウンチューニングと言うものか)。ボーカルは普通のおっさん。ハードロックの改悪としか思えない。私の偏見にぴったりのバンドだった。やっとヘビーメタルに出会えた(これをヘビーメタルと呼ぶのだと思うのだが)。

変な安心をしていたら、次のThe Winery Dogsには驚いた。Wikiに「古典的なパワートリオサウンド」と書いてあったが、まさにクリーム。3人組なのもクリームを意識したとしか思えない。ドラムは確実に好みのリズムを刻んでくれる。ジャックブルースを思わせるベースが素晴らしいし、リードギター兼ボーカルも、クラプトンよりうまい(時代は進化するから当然ではある)。正当的なブルースロックだ。イギリスのバンドだと思ったら、アメリカだったのが意外だったが、40年ぶりの人間にとっては、これは一番の収穫だった。

何故か次が、Part3の冒頭にも登場するAlice in Chains。The Winery Dogsとは傾向が違ってカントリーロックを思わせるが、これも良い。

最後がついに、MetallicaヘビーメタルでもDeftonesよりは、はるかに良い。年齢的にも今が最高なのだろう、貫禄と華がある。決して好みではないが、観客の盛り上がりを見ても、ヘッドライナーにふさわしいとは思う。BABYMETALと一緒に写真を撮って鼻の下をのばしていた男が、真面目にギターを弾いていた。

以上、Sonisphere 2014のハイライトPart2には、9組のバンドが登場した。ところが、何も知らない私でもヘビーメタルと思えるのは、BABYMETALを入れてもたった3組。逆に私が正統派のロックだと思うようなバンドが多かった。そういうものなのか。メタルという概念がわからなくなった。ただ、BABYMETALが飛びぬけて変わっていることだけは、よく認識できた。