BABYMETALは高温超電導だ

東洋経済に近来稀なほど愚かな記事を書いた奴がいる。

「BABYMETAL快進撃!」の絶妙な仕掛け

要するに、BABYMETALはアミューズの売り出し戦略が成功した例であり、ビジネスマンは見習えというわけだ。

この記事が根本的に間違っているのは、「BABYMETALは絶対的(absolutely)に良いから売れている」のであり、戦略とは無関係だということが分かっていないところにある。アミューズはむしろ、下手なマーケティングなどを考えずに黙ってみていた方が、ずっとBABYMETALの成功につながる。

この記事の通りならBABYMETALはまさにgimikkだ。だがそんな小手先のペテンに、日本語の分からない外国人が引っかかるのか?多くのおっさんあるいはじいさん連中が引っかかるのか?

経験を積んだおっさんには、ペテンはすぐにばれる。この境真良という男の底の浅さ、根性のいじましさが手に取るように分かる。

BABYMETALが近頃流行っているらしい、しかもどうも外国の方が評価されているらしい、これはビジネスの逆輸入の例として取り上げたら受けるのではないか。ちょっと気が効いているだろう。

このアホはそんな風に考えたに違いない。

たった1つの失敗で全てを台無しにするという典型例だ。この男はいくつかそれらしい記事を書いていたのだが、ちょっと欲をかいたために自分の愚かさを露呈してしまった。

高温超電導

つい腹立ちまぎれに自分を失いました。

さて、何でBABYMETALが高温超電導(一般的な定義は、絶対温度77度以上でも超電導が起きること)なのかというと。

ひとつに、高温超電導は物性物理学という分野で、20世紀後半最大のエポックだったのだ。関係者は1987年にノーベル賞を受けている。日本でも社会現象になるほど取り上げられた。

それというのも、超電導というのは電気抵抗がゼロになる現象で、究極のエコ(エネルギー損失がゼロ)につながるためだ。ところが、それまでは最高でも絶対温度10度ぐらいに冷やさないとこの現象が出現しなかった。この温度まで冷やすには液体ヘリウムを使うしかないのだが、ヘリウムはたいへん貴重な資源でアメリカでしか取れない圧倒的に高コストな冷媒だ。これに対し、絶対温度77度(摂氏-196度)を超えると冷却のためのコストが飛躍的に下がる。それは液体窒素を使えるからで、窒素は空気の4分の3を占める原料コストがほぼゼロの冷媒だ。

ふたつめに、高温超電導物質の発見の経緯に、かなり偶然の要素がからんでいること。端的に表現すると、「土に金属を何種類かまぜて焼きあげたら、とんでもないものが出来てしまった」というわけだ。もちろん、きちんと細心の準備はしているので、いい加減な仕事をしているわけではなかったのだが、あまりにもすごいものが出来てしまったので、発見した科学者も驚いたわけだ。

BABYMETAL

どうです。BABYMETAL現象に似てるでしょう。

ひとつに、ポピュラー音楽の分野(もちろんヘビーメタルも含む)で2014年の最大の話題と言ってもいい現象ですね。

ふたつめに、BABYMETALを作った人も、こんなになるとは思わなかった。最初は一人の才能ある少女を一番輝かせるにはどうすれば良いかという命題に、自分の好きなヘビーメタルの中に入れて見ようかと、なかば遊びで考えた。さらにエッセンスとして年下の女の子を2人添加して、入念に、細心な注意をはらって楽曲作りを行った。しかしそれでも、それが世紀の大発見につながるとは思いもしなかった。

例の東洋経済の記事よりも、気が効いていませんか。

ちなみに、高温超電導の鍵となる添加金属としてのビスマスや銅は、典型的な重金属(英語ではHeavy Metal)です。