BABYMETALのKARATE
これは、世界最大級の会場にメタルを連れていくバンドが出した、壮大なメタルチューンなのだ (TeamRockサイトの、KARATEの紹介記事から)
和声にあふれた天与の声
KARATEの評判が、たいへん良い。横浜アリーナのファンカムで聴いたのでは、何ともたよりない曲に思っていたのだが、スタジオバージョンは全く、違っていた。やっぱり、ファンカムで判断するのは良くない。
これと関連するのだが、期待していたBlueRayの「Live in UK」が、もうひとつしっくりこない。「Live at Budokan」のCDがとても、良かったのに*1。その理由を考えていて思い至ったのが、録音条件。「Live in UK」は、マルチトラックで録音されていないようだ。その証拠に、海外版ファーストアルバムのおまけについている「ギミチョコ」と、このBlueRayの「ギミチョコ」が同じように聴こえる。ライブ時にミキシングされたままの音なのだろう。
何が不満かというと、ボーカルの音が全く良くない。抜けるようなきらびやかさが消えている。おそらく、我々のリードシンガーの声は、種々の倍音がかなりのパワーで出るために、レベルを落として録音すると、それらが潰れてしまうようだ。後で紹介する文章に、「Su's ethereal, harmonious vocals」という表現が出てくるのだが、このあたりと関連するのではないかと思う。
天与の声を持つのも、苦労なことだ。
リードシングルの前振り
KARATEの紹介がTeamRockサイトに載っている。2月26日掲載だから、リリース日と同じ日だ。当然、Metal Hammerは発売前に聴いている。記事の内容からすると、横浜アリーナのライブバージョンではなく、スタジオバージョンに対する分析のように思える。彼らは、ずいぶん前からスタジオバージョンを聴いていたの違いない。
最近、Metal Hammerは、BABYMETALファンクラブの機関誌化している。
「BABYMETALの3D表紙」で述べたように、281号の表紙がリードシングルがKARATEであることを示唆しているという予想が当たって、にんまりしていたのだが。なんと、彼らは、280号(3月号)でも、そのヒントを与えていたと告白している。Alexander Milas編集長と小林啓は、相当に綿密な打ち合わせをやったのだろう。「BABYMETALの3D表紙」で披露した寸劇は、当たらずとも遠からずだったようだ。
そのMetal Hammerによる、KARATEの紹介を翻訳します。その後に、3月号の記事の抜粋もつけておきます。時間がなく、あまり翻訳を精査できていないことを、先に謝っておきます。
Babymetalの新曲の探求
Luke Morton著 / 2016-02-26
Babymetalの新曲を真面目に調べてみよう
やった、ついにやりました!BabymetalがニューアルバムMetal Resistanceの初めての品定めとしてKARATEをリリースした。
ここで正直に言っておくと、Metal Hammerの280号では、バンドリーダーSu-Metalの分身として、スーパーヒーローKon-Redを紹介していた。そこでは、彼女は超能力を使うのではなく、日本の格闘技である空手を使い、スーパーヒーローとして活躍するときには、「Seiya!」というフレーズを発することになっていた。それが何か大きなヒントになってたのかって?文字通り、目と鼻の先にあったわけだよ ー 新曲の最初の言葉として、「seiya」という単語を大声で叫んでいるんだから。さて、それはともかくとして、この曲は本当に良い曲なのだろうか?
Yes。もちろんだよ。ネット上だけで勇ましくなる、あんた方の指*2を煩わせる前に言っておくが、これはメタルだ。予期せずにこの曲を聴いたなら、これが本当にBabymetalだと分かるまで、34秒かかるだろう(そこからボーカルが始まる)。いまや誰にでも分かるサウンドを生み出す3人のユニークな声だが、それが登場する前にあるのは、電子音のジッタリングをバックにした、リフとヘビーなバスドラムのみ。Kami Bandはこの後の4分間、あくまでもヘビーであり(彼らはいつもそうだが)、ヘッドバンガーには馴染み深いギターが、この曲をひたすら前に突き動かす。
そうは言っても、この曲は、Babymetalの他の多くの持ち歌と同様、ボーカルに尽きる。冒頭から、MoaとYuiが「Seiya sessesse seiya」とチャントするところなんかは、まさにアンセムだ。それに続いて、Suの和声に満ちた天与のボーカルが、パンチと共に繰り出す「Ossu!」を背景に、天上に駆け上る。そして、短いコーラス。今年聴いたなかで最も伝染的でバブルガムな言葉を前にしても、椅子の上のあんたの体がじっと動かないのだとしたら、たぶん、あんたは空っぽなんだろう ー それは壮大な「Whoa-oh-ohs」だ、空に拳を突き上げたくなるような楽しさにあふれている。それが、くり返される。
曲の構成的には、Dillinger Escape Plan*3が夜も眠れないというものではなく、むしろ、かなりストレートだ。それが却って、この曲を馴染みやすいものにしており、(多くのBabymetallerに対する)メタルのより広い世界への入り口になっている。
それと同様に*4、KARATEの歌詞には、「正真正銘の」メタルバンドが書くような言葉が、たくさん散りばめられている。世界中の数えきれないバンドが、反抗すること、逆境に立ち向かうこと、りっぱに闘うこと、そして、勇気を奮い起こして「悪いやつら」に対峙することを、曲に書いている。KARATEの言葉に注目してみると、それは全く変わらない。英語に訳したら、女の子たちは「涙がこぼれても、立ち向かえ」とか、「悲しくても、立ち上がれなくても、ひたすら闘へ」と歌っているのだ*5。極上のリフに乗せて闘いを歌う以上に、メタルなものがあるだろうか。
皆さんは、自分の気持ちを高めるためだけに、この曲を聴くこともできる。しかし、これは、世界最大級の会場にメタルを連れていくバンドが出した、壮大なメタルチューンなのだ*6。それがtr00であるかどうかは別にして*7、拍手喝采するべきだろう。
もしメタルのアーティストがスーパーヒーローになったら
Kon-Red (またの名をSu-Metal、Babymetal)
「私の名はKon-Red。私の使命は、世界中を笑顔と笑いで包み込むこと。私は超能力を持たないけれど、日本の格闘技空手を使う。スーパーヒーローとなる時は、「Seiya!」という言葉を発する。しかし、私は素手で闘うので、武器は苦手だ。装束は赤と黒で、とてもクール。「コンキチ」と呼ぶ縫いぐるみみたいな大きさのキツネと一緒に、山の奥の小さな小屋で暮らしている。彼は私の相棒で、狐神の声を聞くことができる ー 狐神はとても頼もしくて、私が進むべき道を示してくれる。私の唯一の敵は、狐神の敵。熊や犬みたいな。私の山小屋がどこにあるか、それは狐神のみぞ知る」