解散できない少女たち

様々な法律が18歳成人制に向けて改正されようという昨今、もうすぐ19歳になろうかという女性に対して「少女」というのも失礼な話なのだが、単に語呂が良かったという理由で、この表題にしてしまった。

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東京ドームが両日ともソールドアウト。おめでたいことではあるのだが、一番喜んでいるのがだれかというと、株式会社アミューズの経営陣だろう。

BABYMETALは、よくメタル純粋主義者のヘイターから「manufactured」だと非難される。だが、2010年に元の所属グループのスピンオフとしてスタートしたころの話を聞くと、「handmade」がせいぜいな所で、アミューズの経営陣などは、その存在さえ知らなかったのではないか。それが、時代変わればなんとやらで、今や会社の命運を握っていると言っても過言ではない。

両日の売上を勝手に予想すると、入場料関係が8億から10億円。関係商品の売上と放送権料等で、5億円から8億円。ほぼ15億円の売上になると見る。営業利益については、2日連続というのが大きく、営業利益率は少なくとも2割は越えるだろうから、3億円から5億円。アミューズの2017年3月期第二四半期(7月〜9月)に限ると、売上高110億円、営業利益10億円程度を予想していると思われるので、売上高で14%、営業利益では何と四半期の4割近くを、たった2日間で稼ぐことになる。

これはアミューズにとっては、BABYMETALの人気が急に上がったことによる望外の喜びなのだろうか。いや、違うね。やつらは最初から計画していたのだ。鍵は4月1日にある。

4月1日

4月1日というのは、官公庁や学校関係では新年度の初日なのだが、3月決算を採用している株式会社にとっても、やはり新年度の初日にあたる。何を言いたいか、もうお分かりだろう。株式会社アミューズの2017年3月期の初日にあたるその日は、Metal Resistanceの発売日であった。

これはたいへん象徴的な出来事であって、偶然であるとは考えられない。それは、今期よりBABYMETALを稼ぎの柱にするという株主に向けての宣言だったのだ。「狐の日」というのは、その思惑を一般には目立たなくする方便にすぎない。

アミューズが普通のタレント事務所と違うのは、それが上場企業であることだ。上場企業であるからには、多くのメリットもあるかわりに、様々な束縛もある。そのひとつが、株価水準に経営が左右されてしまうことだ。

全ての問題は株式会社アミューズが、2016年3月期に最高益を記録したことに始まる。これにはサザンや福山の働きがあったわけだが、上場企業、特に株価重視経営の気味がある企業に取っては、最高益と言っても両手を挙げて万々歳というわけには行かない。アミューズの場合、昨年の9月ごろには2016年3月期が最高益を記録することが予想されていた。株価はそれをすぐに織り込んで高騰し、後は下がるだけということになる。アミューズの株価は、2016年11月24日に最高値3080円*1を記録した後、現在は6割程度まで下がってしまっている*2

コンサートというのは、何ヶ月も前から計画しているから、2016年3月期が最高益になることは、社内的には昨年の7月か8月ぐらいには分かっていたはずだ*3。そんな時、経営陣だったら何を考えるだろうか。

サザンも福山も来期(昨年から見て)に大型ツアーの予定がないとすれば、2017年3月期が売上、利益とも落ち込むのは確実だ。その落ち込みを出来るだけカバーしたい。期待できるタレントは誰だ? PerfumeflumpoolSEKAI NO OWARI*4? いや、一番期待できるのはBABYMETALだろう。

Wembley Arenaが4月2日だったのには理由があったわけだ。Wembleyの開催発表は8月末だったから、小林が2016年の2月か3月ごろにWembleyでやりたいと打診したとき、経営陣は「それはいいね。でも、4月に延ばすことはできないのかい。4月の初めならベストなんだけど」とでも言ったのではないか。それなら、経費支出の多くを今期に経常して、収入は来期に経常できる*5

そうなれば、後は、毒を食らわば皿までだ*6

「新アルバムも出さないか? Wembleyが4月2日なら、アルバム発売は4月1日しかないよね。来期の初日だから、縁起がいい。来期はBABYMETALで行こうというわけだ、ハハハ。小林くん、頼むよ。何とか、頑張ってくれないか」。

「東京ドームはどうだい? 今年の株主総会で気の早い株主の連中が、何故ドームツアーをやらないのかと言っていたぐらいだから、来期中にはドームコンサートをやらないと、また文句を言われそうなんだ。BABYMETALファンの株主って、ちょっと面倒だよね」。

「9月19日の次の日なんだけど、一応、仮押さえしておいたから。19日がソールドアウトしそうなら、20日もやってよね。ドームの設営費用は結構かかるけど、2日続きなら利益率を上げられるからね。君も役員になったら僕の気持ちが分かるだろうけど、来期はたいへんなんだよ」

「それから、東京オリンピックなんだけど、開会式はBABYMETALということで根回しを始めようと思ってるんだ。そんなことをしなくても、他にライバルはいなさそうだけど、なにせ、話を決めるのは爺さんばっかりだから。念の為にね」

解散

一年のほど前に「BABYMETALと解散」という記事を書いて、BABYMETALの解散の可能性について論じたのだが、また、東京ドーム後に解散するという話が出ていたらしい。だが、現状は当時よりさらに進行している。株式会社アミューズの事情からすると、解散の可能性など、どこをどう探しても見当たらない。

唯一、考えられるのは、女の子たちが仲間割れして、どうしても一緒にやるのが嫌だとなるか、あるいは、メンバーの誰かが、私は別の道を歩きたいと言い出すぐらいか。しかし、彼女たちはとても仲が良さそうだし、辞めたいというのがSu-metalでなければ*7、メンバーを補充してでも続けるということになるだろう。

仮に3人が解散すると言い出したら、経営陣は土下座してでも止めようとする。「さくら学院の子供たちも、君たちが稼いでくれているおかげで活動できるんだよ。それに、君たちは彼女たちの夢なんだ。後輩たちのためにも、何とか続けてくれないか」などと情に訴えられたら、若い子たちがそれを押し切るのは難しいだろう。

*1:アミューズは今年の4月に株式分割をしている。3080円という株価は、株式分割後の水準に修正したもの

*2:確認しておくが、株式会社アミューズの経営が苦しいわけでは全くない。それどころか、減収減益予想の今期でさえ、売上高400億円と1割程度の営業利益率を見込んでいるから、世間的に言えば、たいへんな優良企業なのだ。それでも、株価は許してくれないのが怖いところだ

*3:公式には、アミューズは10月30日に業績予想の修正を開示し、通期の売上予想が417億円から465億円、営業利益が43億円から56億円に上方修正した。最終的な決算では、営業収入489億円、営業利益60億円ということで、その予想をさらに上回った

*4:これらのバンドのことはよく知りません。株式会社アミューズの決算報告書等から情報を得ています。だから、経営陣の見方を表しているのでしょう

*5:ちょっとセコすぎるかな?

*6:BABYMETALが毒というわけじゃない。これと決めたら一気に行くのも経営だ

*7:さすがに彼女が辞めたいということになれば、どうしようもない

Baby Priestの余韻

http://media.gettyimages.com/photos/sumetal-and-moametal-of-babymetal-perform-during-the-alternative-picture-id577570608

そこにいたのは、道端でいつもライブをしているような、本当に自分たちの楽しみのためだけにやっているような、ひとつのバンドだった (theGlimmerTwin氏によるRedditの投稿から)

Metal Resistanceが出た後のハイな状態も終わって*1、海外の記事も薄っぺらい内容ばかり。あまり書きたいことが無いなと思っていたところへ、強烈な一撃だった。それは、BABYMETALがメタル界の大立者と共演したというからではなく*2、冒頭にあげた言葉にあるように、本当にみんなが心から楽しんでいたからだ。

Baby Priest*3のパーフォーマンスがショックを与えたのは、必ずしもファンだけではなかったようで、APMAのBest Live Bandに輝いたNeck DeepのフロントマンBen Barlowは、受賞あいさつで、「Babymetalの後では、何で俺達がこの賞を取れたのか、全く分からない」と言った。それほどまでに、あのパーフォーマンスは、少なくとも業界人には大きな影響を与えたようだった*4

そのパーフォーマンスを一番楽しんでいたのは、他ならぬThe Future Queen of Rock*5、その人だった。「Death stare」とも「Evil stare」とも称される「睨み」は影もなく*6、笑顔だけが彼女を支配していた。ファンとしては、彼女が喜びに溢れ、ステージを熊のように*7、のし歩いているのを見ながら、その日*8が刻々と近づいているのを感じたのだった。

そうした所へ、先を越されてしまったと思ったのが、Redditのハンドル名theGlimmerTwin氏の投稿。私の書きたかったことをそのまま書かれてしまった。国は違っても、BABYMETALが好きな連中は同じように考えているものだと思う。theGlimmerTwin氏は、BABYMETALのアルバム収録曲を一曲づつ、丹念に分析した長文の投稿を続けているのだが、今回はMetal Resistanceの最終回で「The One」の順番に当たっていた。ところが、そこへAPMAのパーフォーマンスが飛び込んできたので、矢も盾もたまらず、記事の前半部をAPMAにあてたというわけだ。そこで、彼の投稿の前半部を紹介することにする。

Redditの投稿から

Resistance Review Series Finale (Part 12): The One (APMAs Special)

theGlimmerTwin / 2016-07-24

(冒頭略)

BabymetalのAPMAにおけるパーフォーマンスは、楽しさにあふれた大成功だった。それは、若者が憧れる対象となることを狙ったものでもなく、既にセカンドアルバムで達成されているように、彼女たちの正当性をもっと高めようとするためでもなかった(そういうものを目指して演ったとしても悪くはなかっただろうが)。そこにいたのは、道端でいつもライブをしているような、本当に自分たちの楽しみのためだけにやっているような、ひとつのバンドだった。そして、それは、世界中のメタルファンとBabymetalのファンにとっては、この上もない贈り物となったのだ。

この予定が発表されたときには、メタル関係の報道が一斉に書きたて、メタルの王者たるRob Halfordが、このジャンルでとても評価が別れる連中とステージを共にする、というようなことを載せていたものだ。うまく行くのだろうか、惨めな失敗となるのだろうか?ここで胸を張って言えることに、結果が後者でなかったことを、Babymetalは確かに証明したのだった。

本番では、彼女たちはリードシングルであるKarateを冒頭にもってきて、いつものように、パワーと釣り合いと正確さを持って演奏したのだが、多くのニュースでは、そのことをさらっと流しただけにとどまった。アワードショーの短いセットでは、コールアンドレスポンスは勢いに水を差すことになる。だから、このような特別の場では、私なら飛ばしてしまっただろう。ところが、ファンカムの映像は、メインとなる観客はともかく、業界関係者が位置取る席のかなりの部分が熱狂していたことを映していた。その影響はなかったようだ。私がここでKarateに言及したのは、この曲が次に続く曲と比較して、完璧な対照となるからなのだ*9

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最初に来たのは、Su-metalとRob Halfordのコラボによる、Judas Priest1990年の古典的名曲Painkiller。人類を救いにやってきた天使を歌っているから、Babymetalとのコラボには何だかぴったりはまる。このパーフォーマンスが始まって、直ぐに気づくのは、Su-metalが何ともくつろいだ様子に見えること。2曲ともに始めから終わりまで、何かから解放されたように、Suは喜びに溢れていた。彼女は時々、このグループのメインボーカリストとしての重圧を口にすることがあるが、これは疑いなく、その義務を他の誰かと分け合うことが出来るという、彼女にしか分からない喜びだった。
 
Su-metalは、3人のうちでも一番、振り付けからの開放感を感じていたようでもあった。ステージを自由に動きまわり、RobやYuiやMoaにちょっかいを出し(後では一緒になって、いろいろやるのだが)、はたまた観客と一緒に大盛り上がり。冷静に見ていたら、Suが自分の番でないときにでも、一緒に歌っていたことが分かっただろう。彼女がこのパーフォーマンスに全力を傾けていたのは明らかだった。このようなコラボをもっとやりたいと熱望しているに違いない。

私が一番好きなところは、何と言っても、Painkillerの2回目のスクリームパートだ。Robは低音域、Suは高音域を担い、RobとSuの声は、音響的に、お互いを讃えあっていた。この2回めのスクリームを終えようとする2/3ぐらいのところで、Suが突然、ギアを入れ換えたようにパンチを放った。そして、それが終わり二人が左右に分かれたとき、Suの顔に大きな喜びとも驚きとも取れる表情が浮かんだのだ。それは、彼女が心のうちで「やったぜ...」と独りごちているように見えた。Robもまた、ステージの上手へと歩きながら、首を上下に振っていた。それは、ビートを取るためだけではなかったようだ。笑みが浮かび、満足感が垣間見えていた。いい仕事だった。

ここで、Su-metalが観客に紹介したのは、「Today's special guitarists... Yuimetal & Moametal」。私は彼女たちが実際に弾いていたかどうかを議論するつもりはない(録画を見れば、弾いていないことは明らかのように思う)。私にとって重要なのは、このパーフォーマンスの楽しさなのだ。

さあ、ステージ上の全員で、「Breaking The Law」の新版を送り出すのだ。小さなお立ち台の上で、MoaとYuiは、注目を浴びながらリフを繰り出した。特にMoaは気合が入っていて、腕を2回、クルクルまわし(彼女がよくやるやつ)、その腕を素早く振り下ろしてギターを弾きだした。Yuiの方は、いつもの振付が無いために、海に放り込まれたみたいな様子だったのだが、ダンスルーチンに全てをかけてきた人間としては、もっともなことだ。Kamiの相棒*10と一緒になったときに、やり取りできる相手ができて、彼女はやっと落ち着いたように見えた。

それに比べてMoaは、若手のギタリストみたいに、はるかに気持ちよさそうで、パワーポーズ*11をとるだけではなく、純粋にギターパーフォーマンスに集中しているように見受けられた。ギターの扱いがかなり大袈裟だったIDZのビデオとは違って、今度のパーフォーマンスは(二人ともに)ずっと抑制されていたのだが、それでも随所にセンスの良さを感じさせていた。彼女たちがライブで弾く機会が、あまりあるとは思わないが、Moaの方は、この曲とその構成を頭に入れているように見えた。

SuとRobが交互に旋律を担い、あるいは一緒にコーラスをする傍ら、MoaとYuiがシュレッドし、神バンドもまた楽しい時間を過ごしているように見えた。それは、パーフォーマー自身が発散する喜びを純粋に味わえるという、楽しいパーフォマンスだった。特にMoaと大村は、終わりにくると、お互いを鏡のように真似、ひざまずきながら、背中を床につかんばかりの格好で演奏し、Breaking the Lawの最後のひと時を心ゆくまで楽しんでいた。そして、一緒に両手をくるくるまわしたかと思うと、最後のジャンプを決めたのだ。

全体的に見て、このパーフォーマンスはアワードショーの中でもハイライトであり、多くのメディアの注目を集めた。端的に言えば、Babymetalの大成功のひとつは、メディアと象徴と言えるような大物を味方につけたことであり、肯定的な発言を得ることが成功の鍵となる要素である。明らかにギターを弾く振りをしていたのを見て、私はこれが反Babymetalの連中からの攻撃材料になるのではないかという危惧を抱いたのだが、そういうコメントはほとんど見られなかった。怒りの大半は、Rob Halfordが、このバンドと共演したという「裏切り」に向けられているようだ。

これは、Babymetalが前に進むための大きな力になる。彼女たちは喜びをもたらすバンドであり、一緒に楽しめて、笑顔になれるバンドである。こういうところにメディアがすり寄り、音楽界の大物たちが惹きつけられるのだ。Rob ZombieやCorey TaylorやRob Halfordのような人々がこのグループを支持するのも、心の底からパーフォーマンスすることが好きなのだという、彼女たちのこの心根に魅了されるのに違いない。人々は、彼女たちのメタルとしての正統性を始終、議論しているけれども、ひとつだけ確かに言えることは、女の子たちが養子先のこのジャンル*12を探求し、パーフォーマンスしている間にも、彼女たちは楽しんでいるということだ。(以降略)

あとがき

この文章のなかで、著者の意見に賛成できないところが、ひとつだけある。それは、MoaとYuiのギターパーフォーマンスが振りだけだと著者が信じている部分だ。残念ながら、というより彼も喜ぶだろうが、少なくとも、Moaは本当に弾いていた。私は、録画の中で、Moaの6弦が大きく振動しているのを見つけた。そして、おそらく、5弦も。彼女は確かに低音のリフを弾いていたのだ。この時、Moaは大村と近距離で向き合っていたから、仮にアンプを通していないとしても、デタラメに弾いているわけがない。そんなことをしたら、大村の演奏にも影響が出てしまう。

ところで、Moaと大村が膝つきで弾いていた部分だが、2階席から撮影されたファンカムのビデオを見ると、これを仕掛けたのはMoaであることが分かる。最初にMoaが、「このまえ教えてくれた、あれをやろうよ」とでも言わんばかりに膝をついて座り込み、それを見た大村が、はっと気付いたように追随した。パーフォーマンスに限れば、この娘は天性のロックギタリストだ。神バンドを含めても、彼女が一番、ロックスピリットを持っているのではないだろうか。

Moaに比べると、Yuiは確かに居心地が悪そうだった。こういう真面目で、慎重で、恥ずかしがり屋の人は、新しいものは苦手だ。しかし、こういう人は、経験を積んで自信があるレベルを越えたときに、急に弾けるものだ。心配はいらない。30代になったときには*13、彼女が一番、暴れまわっているかも知れない。

Rob Halfordも楽しそうだった。若い頃のエネルギーには比べるべくもないが、燃えるものがあったのかも知れない。中年の男は、若い女の子と一緒なら、あれぐらいの元気がでるものだという意見があったが、伝えられる彼の性的嗜好からすれば、それだけは絶対にありえない。純粋にアーティストとしての高揚だ。そして、それを引き出したのは、神バンドの演奏技術と、Su-metalのボーカリストとしてのオーラであるとみて間違いない。「今度はもっと長い時間やろう」と言って別れたのは、彼の本音だろう。

以前の記事でも述べたが、Halfordはヘビーメタルの現状に大きな不満を抱いているようだ*14。そういう彼がBABYMETALと共演したのは、メタルはこうあるべきだという、彼の明確な意思なのだ。メタル純粋主義者は残念だろうが、いくら「裏切り」と非難してみても、流れがもとに戻ることはない。

*1:もちろん、このアルバムに飽きたわけではない。サードアルバムが出るまでは、今世紀最高のアルバムだと思っている

*2:正直なところ、私自身はRob Halfordのことはほとんど知らない。ロックファンだったころは、Judas Priestはまだ駆け出しのバンドだった。だから、メタルの神を有難がっているというより、女の子たちや、なによりも神バンドの連中が嬉しそうにしているのを見て、彼女たちの喜んでいるという事実に感動しているわけだ

*3:BABYMETALとJudas Priestを併せた造語。念の為

*4:グラミー賞の選考委員らしき男が、この場にいたようだ。彼は、演奏前の彼女たちと話したということだが、このパーフォーマンスをどのように感じたのだろうか?。以前の記事で、BABYMETALはグラミー賞を取ると断言したのだが、ちょっと弱気になっている。それと言うのも、そもそも、グラミー賞アメリカ国内の活動が中心になるから、APMAが事実上、今年最後の公演と言えるのだ。BABYMETALは年内は東京ドームで活動を終了しそうで、グラミー賞のノミネートが発表される12月までの5ヶ月間、アメリカでは空白の時間になってしまう。本気で取りに行くなら、11月末ぐらいにニューヨークあたりで大きなコンサートを演ることが望ましいが、日程的に厳しいだろう

*5:私がかってに名づけている称号。いつの日か、The Queen of Rockとして、ロック界に君臨するだろうという意味

*6:もちろん、「睨み」が彼女の魅力のひとつであることに間違いはない

*7:Halfordが年老いた大熊で、彼女が若さに溢れる青年熊

*8:The Queen of Rockの戴冠の日

*9:Karateが振り付けで、後の2曲が(当然のことながら)フリースタイルであることを言っているのか?

*10:藤岡

*11:自信たっぷりのポーズ

*12:自分たちの意思ではなく、ヘビーメタルをやり出したこと

*13:30代のBABYMETALは有り得ないと言った評論家がいたが、私は間違いなく有ると思っている

*14:かと言って、彼自身がそれを変えられるかというと、それは難しい。若い連中に期待するしか術はない

あっ、ギター弾いてる

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みんな楽しそう。

ノミネートされていた賞を取れなかったことも、KARATEの半即興パートが出色の出来だったことも、それは末梢に過ぎない。Alternative Press Music Awards(APMA)における、Rob Halfordとの共演は、とにかく面白かった。BABYMETALのファンはとても盛り上がって、Redditのコメントは一連のスレッドを合わせると1000を越した。

だが、会場は完全にアウェーで、ポップパンク、つまり、All Time Lowのホーム。たぶん、観客の多くは、Rob Halfordというオッサンのことは知りもしない。観客の年代からすればBABYMETALの3人に近いと思われるのだが、ここに入るとBABYMETALでもヘビーに過ぎる。こういう所にRob Halfordを招待する小林もかなりのものだが、この観客にいつものC&Rを仕掛けるSu-metalの傍若無人さと度胸には恐れ入る*1

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Halfordとのセッションは、彼女が一番、楽しんでいたようで、終始、笑顔だった。上の写真は、Judas PriestのBreaking the Lawの途中で、リードシンガーがよくやるギタリストの真似を二人で仲良くやっているところ。Halfordの表情はサングラスで読み取れないが、彼も楽しそうに見える。Painkillerでは二人で同じパートを歌っていたが、あまり合ってなくても、そんなことはお構いなし。当たり前とは言え、高音のスクリームは彼女の独壇場だ。Redditで日本人と思われる奴がLの発音に文句をつけていたが*2、そういう問題ではない。ロックだ。

BABYMETALを始めたときにヘビーメタルを知らなかったと、何かと話題になる彼女だが、いまや正真正銘のロックスターだ。髪飾りとひらひらのスカートという違和感が、やけに目立った*3

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もちろん、みんなが驚いたのは、YuiとMoaがギターを弾いたところ。上手でMoaと大村が、下手でYuiと藤岡が向い合って弾いていた。夫々が先生と生徒の関係なのだろう。彼女たちの演奏がアンプに繋がっていたかどうかは良く分からないが、コードはちゃんと押さえていたようだ。大村とMoaのペアは面白かった。ソロを弾いている大村がヘドバンして、コードを刻んでいるMoaの方が逆に、リードギターみたいに首を左右に振っていて、まるで変態男に迫られてイヤイヤしているみたい。それでも絵にはなっていた。

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それにしても、神バンドの能力は素晴らしい。普段はやらない曲を何のこともなくこなし、特に大村と藤岡は生徒を指導しながらの演奏なのに、全く乱れない。

2人の高校生ギタリストを抱えたバンドは、文字通り高校の文化祭みたいに、みんなが楽しそうだった。

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終了後のコメント

Rob Halfordは、セッションの終了後に、次のように述べている。

「本当に強烈だった。Babymetalは1000%、Priestだ。彼女たちは、ヘビーメタルの最前線で、突撃の先頭に立っているんだ」。

この男のBABYMETALに対する評価は、相当なものだ。現在のヘビーメタルをリードしているのはBABYMETALだと言わんばかりだ。メタルの沈滞を身にしみて感じていたからなのだろう。今回の共演を受け入れたのも、自他共に認めるメタルのルーツとして、BABYMETALに正統なメタルバンドとしての認証を与える意味合いがあったのかも知れない。

(スチールの良いのが公開されてきたので、画像を入れ替えた)

*1:あまり細かいことは考えていないのかも知れないが

*2:こういうことを言うのは大概、日本人だ

*3:それもBABYMETALの奇妙な魅力のひとつなのだろう