カリスマ

中元すず香が持つカリスマについては、多くの人が気づいているが、それがどこにあるのかは良くわからない。

天才にカリスマが宿るとは限らないし、その逆については成り立たないのが普通だ。

楚の項羽は天才であったが、最後に部下が離れて行った。対する漢の劉邦は、凡庸な指導者に過ぎなかったが、多くの有能な志士が自然に彼のまわりに集まってきた。

ところが、ひょっとしたら彼女はその両方を持っているのかも知れない。

Sonisphere 2014の動画を見ていて、彼女のカリスマの一端をみたような瞬間があった。IDZのインストルメンタルパートが始まった直後、彼女は歌舞伎役者が見栄を切るように、左右を交互に睨んだのだ。しかも、なんともいえない笑みを浮かべて。

その笑みはまるで。初めてスーパーボウルに出場した若きクォーターバックが、35点差をつけて迎えた第4Q残り1分30秒、満員のスタンドを見上げながらハドルに向かうときのような笑みだった。

シーホークスのラッセルウィルソンが去年の2月2日、そんな風に笑ったかどうかは定かではないが、彼女の顔には、緊張して迎えた大舞台をほぼ完勝して終えようとする若者の満足感がにじみ出ていた。その瞬間、たしかに彼女は6万人の聴衆の上に君臨し、支配していた。