おめでとう、そして、さようなら

"The Future Queen of Rock"にあらせられましては、十九歳の御誕生日をお迎え遊ばされましたことを、お芽出たく忝なくお悦び申し上げます (2016年12月20日)


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どうやら、281号のこの表紙が、Metal Hammerにおける、BABYMETALの最後の表紙になりそうだ。なにも殿下*1の誕生日に発表することもないと思うのだが、TeamRock社の更生管財手続き(Administration)の開始が明らかになった。事実上の倒産である。

Metal Hammerは、編集長が代わってBABYMETALへの興味が薄れたとは言え、国外でBABYMETALを本格的に扱ってくれた初めての雑誌である。BABYMETALの長くはない歴史の中でさえ、ひとつの時代が終わってしまったことを感じさせる。

イギリスでは、企業の倒産は「1986年倒産法」*2に従って処理される。分類すると次の3種類がある*3

  1. Administration
  2. Administrative Receivership(破産に対応)
  3. Liquidation(清算に対応)

更生管財手続きは、日本で言えば会社更生法の手続きに対応するもので、他の2つと比べて、会社の更生を目指すという性格がある。そのため、更生管財手続きの開始が、即Metal Hammerの廃刊につながるわけではない。しかしながら、TeamRock社の従業員80人のうち73人が解雇されるということも同時に明らかになっているので、当面は雑誌の発行が出来ない状態になることは確実だ*4

下の図は、TeamRock社発行4誌のうち、Metal HammerとClassic Rockの、1号当りの平均販売部数の推移を示したものである。Classic Rockは、昨年度ほぼ横ばいを維持できたとは言え、非常に厳しい状況であったことが分かる。Kerrang!も比較のために示してあるが、雑誌業界全体が部数減に苦しんでいるようだ*5


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Daily Recordの記事から、数字を拾ってみたのが下の表である*6。2015年に急激に財務が悪化しているのが分かる。

2014年 2015年
売上高 10.9億円 9.5億円
一般管理費 13.5億円 18.1億円
負債 8.6億円 18.5億円

これでは、倒産も仕方ない数字だ。この後は、再建がなるかどうかだが、はたして雑誌を引き継いでくれるスポンサーが現れるだろうか。仮に負債をゼロにして引き継いだとしても、1年あたり10億円近い赤字が出るようでは、見通しが暗いと言うしかない。

*1:まだ、The Queen of Rockではないから、陛下ではない

*2:2002年に改正

*3:これ以外に、「1985年会社法」に基づく処理法(和議に対応する)もある

*4:瑣末なことだが、私の定期購読は今年いっぱいで終了する。2月号から送付が始まったので、まだ来年の1月号は送付されなければならない。だから、非常に少額とはいえ、私も債権者の一員である。思えば、少し妙だと思うことがあった。定期購読が切れる予定にも関わらず、TeamRockから購読延長要請の連絡がなかったのだ。数カ月前から、倒産は見込まれていたのだろう

*5:Kerrang!も安閑とは、していられない

*6:本日の為替レートで換算した