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おっさんたちのジレンマ

最近、BABYMETALの記事をほとんど書いていないのだが、理由はある。だがそれはしょうもない愚痴なので、書く価値もないとして放っておいた。しかし、このブログでBABYMETALを扱うことを期待している方々が何人かおられるらしいので、書かないなら書かないで、それなりの訳を説明しておくのが義務だとも思った。

今回はおっさんたちの愚痴だよ。

いま現在、BABYMETALはRHCPのアメリカツアー中だ。ノーリスクで、ある程度、顔も売れる。ビジネスとしては、うまい話だ。だが、ビジネスを離れると、我々ブルース世代にとっては、BABYMETALがどんどんポップになっていくような、複雑な気持ちなのだ*1

なにしろ我々からすれば、ヘビーメタルはまがいもの(ギミック)に見える*2。それでもへビーメタルはまだましな方で、BABYMETALがヘビーメタルの仲間になりたいのなら応援しなければ、という思いはある。

そこへくると、RHCPなんてのは、ポップにしか思えない*3。なんで格下のポップバンドの前座をやらなければならないのだ、と思うわけだ。まあ、やっぱり、ビジネスなんだろう。

M氏

M氏は、180cmを越える大柄な体から、それに相応しい銅鑼声を響かせて言った。

「何でワシのBABYMETALが、あんなしょうもないバンドの前座をせなあかんのや」

昨年8月の終わりごろ、M氏にいつもの呑み屋に呼び出された。M氏は、両手の太い金鎖に加えて、大きな金の指輪、黒の地模様の入ったシルクシャツの前をはだけて、金のネックレスを覗かせていた。一度、彼に何でそんな格好をするのだと聞いたら、小金持ちは小金持ちらしく振る舞うのが相手に対する礼儀だと、わけのわからないことを言っていた。年齢の割りには量の多い長髪を後ろで束ねてポニーテールにしているのが、日に焼けた武骨な顔には、おそろしく似合わない。

「早速、それですか。でも、世間では喜んでいるみたいですよ。こんな時間にやってきて、祭りの方は大丈夫なんですか。もう今頃は、稽古も始まってるんでしょう?」

彼は秋祭りの差配をする長老のひとりなのだ。M氏の住んでいる市は、このあたりでは最も人口の増加が著しい新興都市なのだが、江戸時代から続く風習を色濃く残しているため、祭りを運営するのは地域の顔役の義務であり、また名誉でもある。彼は、若いころに父親の小さな会社を継いだ。その会社は、いまでは市内の大抵の人が知っている程度には大きくなっている。

「そんなもん、若いやつにまかしといたらええのや。年寄りが出ると煙たがられるだけや。それより、BABYMETALや。てっちりはあかん、てっちりは」

「あなた、ふぐ鍋じゃないんですから、てっちりじゃなくて、レッ...。なんだ、ボケですか」

「へへへ、分かった?」

そういうしょうもない冗談を言うときだけ、M氏の強面の顔がやさしくなる。

「あなた、そんなに文句を言うほど、あのバンドのことを知ってるんですか?」

「知るわけないわい。ワシはむかし、ちょっとふぐに当たったことがあって、それ以来ふぐはあかんのや」

「どうしても、ふぐで押しますか。それはそれとして、ちょっとぐらい聴いたことないの?」

「ホンマのこと言うと、ニュースが出てからYouTubeで何曲か聴いたんや」

「それはご勉強でしたね。それで?」

「言うた通りや。しょうもなかった。ブルースのブもない。ポップにしか聴こえん。好き嫌い以前の問題やな。まあ、ベースだけはちょっとましやったが」

彼は京都のある私立大学の在学中からロックバンドを組んでいて、ベースをやっていた*4。そして、勉強以外のほとんど全てをやって卒業してからも、アルバイトをしながら、彼の言う「親父が突然、ボケよった」ときまで、そのバンドを続けていたのだ。

「そのベーシストですがね、BABYMETALについて良いことを言ってるんですよ。読んでみましょうか?」


「Fleaはまた、日本人の女性だけのロックトリオBabymetalとツアーするのが楽しみで、わくわくしているのだと明かした。『彼女たちは弾けまくっとるし、バンドは本物やし、最高やね』とFleaが言う。

『日本のフェスティバルで演っとるのを見たんやが、あのおもろい女の子たちと一緒やったら、そらおもろいことになるやろなと思いながら、えらい楽しんだんや』。

『どんなバンドでもせやねんけど、俺がほしいのは、今まで味おうたことも無いようなもんを感じさせてくれということなんや。ちょっと危ないでと思うようなことをやるとか、宙に浮かんだみたいに感じさせるとか、ケダモンみたいに踊るとか、そういうことをやって欲しいねん』。

『そんな風に感じれることはもう、だんだん無うなってきたんやが、Babymetalちゅうのは、ほんまにもう君たちは何をしてくれるねん、という感じなんや』」


「なかなか、ええことを言うとるやないか。さすが、ベースやな。それに、大阪弁のところがええ」

「ハハハ、西海岸だから、大阪弁にしてみました。それはともかく、ちょっとは見直しました?」

「あかん。ええやつはええやつでも、大事なのは音楽や」

音楽と世代

「音楽? あなたはヘビーメタルは嫌いやと言ってましたよね。なのに、APMAのときには感激して電話してきたじゃないですか。ハルフォードだったら許せるの?」

「それは...、あれやがな。すうちゃんがあれだけ喜んでたんやから...。それに、ハルフォードとは同学年やし」

Su-metalはM氏の神だ。

「同学年? あっちはイギリスですから、学年の基準も違うと思いますが、まあ、同世代だと言いたいんでしょうけど。だけど、音楽と関係ありますかね?」

「それが、あるんやなあ。わしらの世代は骨の髄までブルースが染みこんどる。せやから、何も言わんでもハルフォードのことは分かる」

「ハルフォードがブルースかなあ? それはともかく、あなたの言う世代論は、私も当たってるかも知れないとは思いますね。ブルースの影響を受けたロックは60年代から70年代にかけて。ヘビーメタルは80年代の音楽だ。だから、嫌いだと言いながらも、全く分からないわけではない」

「それに対し、あなたの言う"てっちり"がブレイクしたのは、1991年。時代はバブルの終末期。あなたはバブルの後始末でたいへんだった。音楽どころじゃない」

「そうや。バブルが破裂するのはもう分かっていたから、80年代の終わりには土地も建物も処分を始めてたんや。それでも儲けのほとんどは失うたが、何とか会社は残せた。確かにあのころに聴いた音楽なんて、ディスコのVIPルームで商談している時に聴こえてきたしょうもないユーロビートだけやったな」

「私だって、大学に勤めだして研究分野を変えたり、音楽などという時代じゃなかった。だから、Reading & Leedsでトリをとるという報道が出るまで、あのバンドのことは知らなかった。BABYMETALが前座をするというので、世間が喜んでいるのが不思議で仕方がない」

「そうやろ? 君も、そう思てるんやろ? さすが、わしのソウルブラザーや。君かて、てっちりはあかんやろ」

「あかんと言うより、全く興味がない。引っかかるところが何も無い」

「そうやがな。それを大阪弁でしょうもないと言うのや」

来年を待とう

ここでは、RHCPを取り上げたが、Guns N' Rosesでも、Metallicaでも、Kornでも同じようなものだ。我々は興味がない。

BABYMETALは、今年は流すつもりなのだろう。あとの二人が高校を卒業するのを待って、アメリカでの活動を始めるつもりかも知れない。そのころには3枚目のアルバムも出すことになるだろう。それを楽しみに待つことにしよう。それまで、しばらく、BABYMETALの話は書かないことになるだろう。

ちなみに、私は、前の記事で取り上げた娘と同い年の女性シンガーに興味津々なのだが、M氏は「何であんな四角い顔がええねん」と全く興味を示さない*5

*1:BABYMETALは元々Jポップではないかと言われても、そもそも「Jポップ」というものが、良くわからないんだ、私たちは

*2:だから、ヘビーメタル純粋主義者がBABYMETALをギミックと呼んで貶す意味が、全くわからない。君たちは、まがいものが好きじゃなかったのかね?

*3:Rolling Stoneのロックの殿堂に選ばれたことは知っているが、そもそも最近のRolling Stoneは、少しおかしい

*4:京都では割に知られていたバンドで、いまなら絶対にヘビーメタルバンドだとみられるに違いない名前だったのだが、もちろん、そんな頃にヘビーメタルは存在していなかったし、ちゃんとした(今で言う)ブルース・ロックをやっていた

*5:本当は五角形なんだけどな