BABYMETALと又吉直樹
この内容は、前回のMetalHammerの記事に入れていたのだが、長すぎたので削って置いておいた。
そうしたら、昨日、又吉の芥川賞が決まってしまった。
たいへんおめでたいことだし、内容からして当然の受賞であるが、又吉を取り巻く一連の図式があまりにもBABYMETALの持て囃され方と類似していることに気付かされる。
沈滞するジャンルの救世主
又吉の芥川賞については、「火花」が「文學界」の2月号に掲載された時から噂されていたことだ。文藝春秋社は又吉に芥川賞か直木賞のどちらかを取らせるつもりらしいと。
又吉直樹が持て囃される背景には、本が売れなくなったことがある。特に「文學界」が対象とする純文学については切実だ。その中で純文学と若い世代をつなぐ仲介者として、又吉が果たしてきた役割は今まででもたいへん大きかった。きゃりーぱみゅぱみゅと一緒にファッションの話をしている人気芸人が、太宰の文学を語るのだから。文藝春秋あるいは出版界全体が、又吉の処女作に期待するのも至極、当然である。
文藝春秋の思惑は、いままでのところ大成功である。普段1万部しか刷らない「文學界」*1は史上初の増刷で4万部を完売し、異例の速さで出版された単行本はノミネート時点で40万部を超えた*2。
三省堂の販売関係者は、又吉の芥川賞をここ数年の出版界で最大の出来事のひとつだと言っている。実際、そうだろう。又吉の著書だけでなく、又吉が紹介した本の売上もさらに伸びるに違いない。それ以上に出版界が期待するのは、これをきっかけに純文学、そして書籍全体の売上げが増加することだ。
又吉も受賞会見で「とにかく100冊、本を読んでほしい」などと若者に呼びかけている。こんなありがたい広告塔はいない。出版界としては、又吉の芥川賞に直木賞をつけても惜しくない。
Metal Hammerが売り切れた
さて、BABYMETALの方だが。
前の記事では、Metal Hammerの期待について悲観的な予想をした。しかし、今回少しだけMetal Hammerにとって嬉しいことが起こった。
数日前、Metal Hammerの273号の表紙がBABYMETALになるという情報が流れた。ポスターにキツネのお面まで付けるという*3。
ところが、それから3日たったかたたないかで、WEB販売予定分が売り切れてしまった。まだ店頭発売前だというのに。表紙の画像が載っていた販売ページからは、画像が削除されている。店頭発売は来週の火曜日だそうだから、既に書店に並ぶ予定の分しか残っていない。
前の記事でもふれた2014年のMetal Hammerの売上データを見ると、月別の最高発行部数が3万部弱なので、売り切れたといっても発行部数は3万部ちょっとだろう。それでも、2014年以降の月別最高発行部数を達成しそうだ。
BABYMETALにくらいつくというMetal Hammerの戦略は、ちょっとだけ結実したようだ。
ちょっとだけ、おめでとう(下は273号を持つMetal Hammer編集部。Redditへの投稿用写真だったので、みんなキツネサインを作っている)。