山本彩、aiko、Phoebe Snow

三題噺みたいだが、この3人の名前を並べたのは、私が初めてに違いない。

山本彩は、明らかに、ミュージシャンとしての正当な評価を受けていない。しかし、それは彼女がアイドルであることに固執するのが一因だから、仕方ないことではある。普通の音楽ファンが、AKBだとか何とかいうグループに属するアイドルが、まともに歌えると考えるはずもない。

奇妙なことに、彼女のアイドルとしてのファンにも、グループ脱退後に彼女がアーティストとしてやっていけるかどうか、疑問を持っているのもいるようだ。たぶん、彼らは音楽を聴く耳を持っていないのだろう。

https://www.amazon.co.jp/Rainbow-%E9%80%9A%E5%B8%B8%E7%9B%A4-%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E5%BD%A9/dp/B01LMYE2QU/ref=pd_cp_15_1?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=3J3MQY6VGJ0D7DC97VDB

定評のある天与の声に加え、ビブラートも息継ぎも全てがリズムを裏打ちするという、その類まれな表現力、こんな才人はめったにいるものじゃない。

とは言え、ファーストアルバムにも漸く、すこし飽きてきた。なにしろ、この半年間、最寄りの駅まで行き帰り一時間の道のりを歩きながら、ほとんど「Rainbow」ばかり聴いていたのだから。

aiko

山本彩阪急京都線沿線の出身のようだ。ある時、シンガーソングライターに大阪出身の女性がいやに多いことに気付いた*1。代表はaikoだろう。aikoの父は東梅田の近くでバーをやっている。

菊地成孔というサックス吹きがaikoに耽溺しているらしいaikoの歌を聴いていると、「自分は恋してるな」と思うそうだ。それはそれは、涙ぐましいばかりの中年男の愛が溢れている。

その菊池が、aikoブルーノートを激賞している。日本で一番ブルーノートがうまいのは、久保田利伸aikoだと言う。私も、以前から山本彩にだた一つ欠けているのがブルーノートだと思っていたから*2、そこまで言われればと、記事に載っていた「くちびる」を含むアルバムを買った。

https://www.amazon.co.jp/%E6%99%82%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88-%E9%80%9A%E5%B8%B8%E4%BB%95%E6%A7%98-aiko/dp/B007ZQKB9W

素晴らしく上手い。aikoをブルースと言う人もいる。確かにブルースと言われればブルースなんだが、Ella FitzgeraldにJポップを歌わせたような奇妙な雰囲気で、独自の音楽世界が出来上がっている。彼女も天才のひとりであるのは間違いない。

しかし、aikoをずっと聴き続けるのは、私にはしんどい。高音がときどき癇に障る。ラブソングづくしの歌詞は、毎日となると辛い。山本彩に戻るとほっとすることがある。

Phoebe Snow

aikoを最初に聴いたときに思った。これをブルースとすれば、何と言うか。アーバンブルース...。しかし、アーバンブルースも、シティーブルースも、モダンブルースも全て、1940年ごろに使われている言葉だ...。こんな感じの歌を、ずいぶん昔にも聴いた気がする。

ふいに思い出した...。そうだ、Phoebe Snow

https://www.amazon.co.jp/Phoebe-Snow/dp/B000002TVF

原題が、同名タイトルのPhoebe Snow、和名がサンフランシスコ・ベイ・ブルースPhoebe Snowのファーストアルバムにして、彼女の最高傑作。

これを長い間、思い出せなかったのだ。それが、「くちびる」を聴いた瞬間に思い出した。

ジャズの手練を揃えたアコーステックな雰囲気、透き通るような美声、そう呼ぶにはあまりにあからさまな、海の波のようなビブラート。完璧なPhoebe Snowの世界。大げさに言うと、70年代最高のアルバムではないかと思う。


というわけで、「山本彩のち、Phoebe Snowときどき、aiko」。

*1:大阪経済の沈滞を表しているのだろう。「売り家と唐様で書く三代目」という川柳にあるごとく、経済が破綻して芸事が残るのだ

*2:ところが、AbemaTVのライブはちょっとブルージーだった。新しく加わったコーラスの女性に引っ張られたのか?