「棘」は売れないかも知れないが

最近、BABYMETALが沈滞しているために*1、扱うのが山本彩ばかりになってしまっている。今回もそうだ。

山本彩がユニバーサルジャパンに移籍して2枚目のシングル「棘」が発売された。

https://content-jp.umgi.net/products/um/UMCK-5677_ajg_extralarge.jpg?23072019072252

私が山本彩を発見したのは*2、2017年の初め、ちょうどBABYMETALが沈滞への道を辿りつつあるころだった*3。それは彼女の中にロックシンガーとしての将来を見たからだ。

それ以来、彼女がアイドルを廃業してロックシンガーとして独立することを楽しみにしていた。だが、それが実現するのには、かなりの時間が必要だった。一時は彼女がアーティストとしての旬を逃してしまったのではないかと心配した。やっと独立がかない、ユニバーサルジャパンから最初のシングルを出したときには、すでに2019年の4月を迎えていた。

そのシングルの歌詞には彼女の決意が明確に述べられていた。しかし音楽性においては、従来のポップ・ロックの路線が踏襲されていた*4

だが「棘」は違った。私の予想をはるかに越えてしまった。表題曲はヘビーロックの名曲と言っていいだろう。山本彩は、このミニアルバムで*5、自分の進む道を極めて明確に示したのだ*6


残念なことに「棘」の表題曲は、今の世の中に受け入れられないかも知れない。そもそも、彼女のファンに評判が良くない。砂糖まみれのアイドルポップスを聴いてきた人たちの耳には、表題曲の「棘」は異端にすぎる。ついて行けないのも当然だ。

山本彩は、この曲を通してファンの人たちに、こう言っているのではないか。

「私がここまで来れたのも、全てあなた方のおかげです。けれども今、私の真の姿を顕すときが来ました。私の我がままを許してください。私の十年は、このためにあったのです。

この先は暗い険しい道になります。出来るならば、あなた方と一緒に歩いていきたい。けれども、ついていけない人もいるでしょう。どうか分かってください。私は、私の本当の夢を実現しなければならないのです。ここまでついてきてくれたことに、心から感謝します」


(「棘」についての話は次に続きます)

*1:BABYMETALについて書きたいとはいつも思っているのだが、愚痴と批判ばかりになりそうなので躊躇している。記事が滞っているのもそのためだ。だが彼女らの新アルバムについてはいずれレビューしたい。褒めることになったらいいなと思っている

*2:山本彩は有名人だから「発見」というのはおかしいかも知れないが、とにかく私は彼女のことを知らなかったのだ。顔も見たことがなかったし、名前の読み方も知らなかった

*3:もちろんこれは私の見方だが、2016年がBABYMETALの頂点だったとする意見は特に外国ファンの間に多い。その大きな要因が Yumetal の体調不良と脱退にあることは確かだが、私は一番の問題はマネージメントの失敗にあるとみている

*4:歌唱法にも変化がみられ全体として悪くはなかったのだが、少し「こんなものか」という思いが残った。今となっては、音楽性の大きな変化を緩和するためのクッションだったことが分かる

*5:3曲ともそれぞれに主張があり、新たな音楽的志向が展開されている。アルバムと呼ぶ方が相応しい

*6:彼女の進む道がヘビーロックだけでないことは、あとの2曲に示されている